水系の消火設備において、漏水トラブルはつきものです。
特に地中埋設配管部分で漏水している(※目視できないので消去法で判断)ことによる改修工事は定期的に御座います。
※本記事は従来の塩ビ被覆の配管用炭素鋼管についての性能等を非難するものでは決してなく、今回弊社にて用いた耐震性に優れた新しい消火用樹脂管(令和2年の通知に基づく)の魅力を発信する意図で作成しています。
地中埋設部分の塩ビ被覆SGPでトラブル
この埋設部分の配管が何らかの形(Ex. 地震で曲がったり接合部分が腐食したり)で損傷することで、地中で漏水してしまい消火設備が正常に使用できないトラブルが現場で起こり得るのです。
施工後10年経過時に行う連結送水管の配管耐圧試験で漏水が確認されるケースも多々ある他、今回弊社で改修工事を行った案件については「スプリンクラー設備の地中埋設部分で漏水してしまい、消火ポンプが作動してしまう」という非常に厄介な現象でした。
ここで問題になったのが、地中埋設部分の漏水原因が「地震等の外的要因」によるものなのか「初期施工不良」なのか不明であり、初期不良でない証明も出来ないことです。
地中埋設配管での漏水が弊社の施工不良であるかどうかを証明できない以上、お客様(※とても大切なお客様)も施主様との間で信用問題になり兼ねませんから再発防止策といった工夫も付加した上で改修工事を承る運びとなったワケです。
耐震性に優れた消火用樹脂管を用いて再敷設!
令和2年に通知された消防予代14号にて『合成樹脂製の管及び管継手を地中埋設部分に使用する場合、当該部分は「火災時に熱を受けるおそれがある部分」には該当しない…。』という旨が謳われており、地中埋設部分にのみ樹脂管使用が明確に認められています。
消火用樹脂管は、以下の点で従来より使用してきた塩ビ被覆アリの配管用炭素鋼管より優れています。
- ☑ 耐食性
- ☑ 耐震性
- ☑ 施工性
特に施工業者としてメリットであると感じたのは以下の通り。
- ☑ 配管が軽いので持ち運びやすい!
- ☑ 配管接続に旋盤(ねじ切り機)が不要!
耐震性UPを計った消火用樹脂管の選定でしたが、慣れれば施工性の良さから大幅なコスト削減も期待できそうです。
消火用樹脂管の切削加工
※配管のカットについてはレシプロソー等で用意に行えました。
切削加工専用の刃はメーカーから借りられます。
鋼管を加工する際に必要な重たい旋盤を現場に持ってこずとも、電動ドライバーさえあれば配管加工が可能となっています。
動画を見て頂けます通り、まるでリンゴの皮をシャリシャリと剥く様に消火用樹脂管の表面が削れていくのが分かります。
この切削した部分を同じく樹脂製の継手類(エルボ・チーズ等)に挿入して電気融着することで、接合されるのです。
パイプレンチで強く締め付ける力仕事も、省略できるのです。
では次に、電気融着の様子を紹介していきます。
消火用配管の電気融着
消火用樹脂管の情報を読み取る「バーコードリーダー付き電気融着機」も、メーカーから借りることができます。
動画中でも写り込んでいる通り「丁寧なマニュアル」も付属している為、その通りやれば簡単に電気融着できます。
敷設する場所に仮置きして長さを確認した後に地上で接合してもよいですし、そのまま地中敷設箇所に消火用樹脂管を置いて接合するのもアリです。
※もしバーコード頭の人が現場にいた場合は、間違えて読み取らないように注意して下さい。
この後、土で埋め戻せば「消火用樹脂管を用いたスプリンクラー設備の埋設配管改修工事」の完了です。
まとめ
- 従来より一般的な消火用の地中埋設配管には腐食防止の為に塩ビ被覆がされた鋼管が用いられていたが、埋設部分の配管が何らかの形で損傷することにより、地中で漏水してしまい消火設備が正常に使用できないトラブルが現場にて確認されていた。✅
- 地中埋設部分の漏水原因が「地震等の外的要因」によるものなのか「初期施工不良」なのか不明であり、初期不良でない証明も出来ない為、再発防止策といった工夫も付加した上で改修工事を承る運びとなり耐震性に優れた新しい消火用樹脂管(令和2年の通知に基づく)を用いた。✅
- 消火用樹脂管は耐震性UPを計った消火用樹脂管の選定だったが慣れれば施工性の良さから大幅なコスト削減も期待でき、鋼管を加工する際に必要な重たい旋盤を現場に持ってこずとも、電動ドライバーさえあれば配管加工が可能であることやパイプレンチで強く締め付ける力仕事も、省略できるメリットがあった。✅
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名無しさん (土曜日, 24 10月 2020 18:31)
驚いたのは最高使用圧力1.6MPaと100Aとの仕様です。
100Aや1.6MPaのそれぞれはまだ通常の範囲ですが、100Aだと普通の水道管(1.0MPa)仕様でも1mあたり約12kgの重量で苦労。それが1.6MPaとなると、支持構造物だけでも大変。靭性で樹脂管がたわむのを見て心配するか、それとも安心するか、従事経験で大きく分かれるように思います。
また、1.6MPa設計は、一般的なA-1,A-2級消防車(高圧定格点1.4MPa:全自動では設定1.5MPaまでが多い様子:https://www.nikki-net.co.jp/parts/aquaviewer)の性能を考えれば余裕のある数字ですが、例えば100A設計に1.4MPaにて送水したら流量はどうなるか。スプリンクラーでは単にポタポタ流すだけではなく、噴霧に必要な流量(及び圧力損失)を考えると、設計からして相当キツいな、との印象です(だからこそ給料が頂けるのですが)。
実感として100A以上とか、スケジュール管(圧力配管用炭素鋼鋼管)だと、設計段階から施工方法に配慮しないと、腰痛一直線。消火用樹脂管の適用可能箇所は限定されますが、使えるところではお客さんにとってのメリットをしっかり説明して、積極的に採用したいですね。
名無しさん (日曜日, 25 10月 2020 00:54)
昔話(参考にまで)
何故、こんなところでエルボで左右に分けて戻す(見た目は一直線に施工可能ですが、わざわざ東西南北方向にクランクを作る)のだろう?と不思議な配管がありました。
親方に訊くと「ああ、あそこは一直線にすると(水の流れが変わったときに)一番奥にあるエルボでハンマーが酷いからな。」とのこと(他では逆止弁も類似)。また、温度変化が余り大きくない飲料用水管ではほぼ無視して良いのですが、蒸気や給湯配管で温度変化が激しいものでは配管自体の熱膨張も含めて、わざわざ「?」という配置をする場合が見受けられます。
ボイラー蒸気も扱う私がとにかく怖いのはハンマーですが、それ以外にも思わぬ要因から乱流が起きて(音で分かりますが)配管が削れてしまうこともあります。最低限リークテストは行いますが、本心はありとあらゆる流量域・温度域で確認しないと、何時漏水したり破断するか分からず不安とは、もはや職業病です。
設備士勉強中 (月曜日, 26 10月 2020 11:58)
スプリンクラーのヘッドについて質問があります�閉鎖型のヘッドは、作動したヘッドのみ散水するものなのでしょうか?気になって仕方ありません。
管理人 (火曜日, 27 10月 2020 09:36)
>名無しさん
コメント有難う御座います!!�
仰います通り、100Aのスケジュール管5.5mとか重たすぎて非力ゆえに運べない人もいる位です。
ウォーターハンマーを考慮して配管を敢えて曲げるような事例あるのですね。消火設備に関しては日常的に稼働しませんが、現場の環境(例えば以前、多湿過ぎて配管が腐った)とかで漏水することならありました。「思わぬ要因」への配慮は、機械的な作業化が進む現代以降でも人間の仕事として残っていく部分かと思っています。
有意義なお話、大変感謝です!!
今後共、何卒宜しくお願い致します。
>設備士勉強中 様
コメント有難う御座います!!
閉鎖型ヘッドは、ヘッドが弾けた部分だけ放水されます。
エリアで放水されるのは開放型で、その場合は一斉開放弁ってのが感知器や感知ヘッドで開くことによって通水し、開けっ放しになっているヘッドからエリア単位で放水されます。
今後共、何卒宜しくお願い致します。�♪
タカマホン (火曜日, 14 9月 2021 20:22)
合成樹脂管を用いた連結送水管の耐圧試験の時に、樹脂管が伸びることで圧力低下がみられると聞きました。その時の対応等をよろしければご教授ください。よろしくお願いいたします。