近年、共同住宅の一部を借りて、そこで事業を開始されるケースが増加しています。
その事業内容として多いのが、“デイサービス” などの福祉施設ではないでしょうか。
この時、特に事業者の方に気を付けていただきたいことがあります。
それは、“自動火災報知設備” などの消防設備があるか、ということです。
営業を開始するにあたって、行政(役所など)に所轄消防署の検査が済んでいる旨を証明する書類を提出する必要があります。
(´-`).。oO(それがないと、認可が下りません。)
ここで “特例” による基準緩和によって、自動火災報知設備をはじめとする各設備が免除されている場合を紹介させていただきます。
この場合、その共同住宅に事業所などが入ることで、特例の要件を満たさなくなり、建物全体に自動火災報知設備などを設置する義務が生じてしまう可能性があります。
続きに詳細を示しますので、是非ご覧ください。……
共同住宅に適用される消防法の特例
昭和23年7月24日の消防法制定当初、共同住宅は一般ビルと同じ扱いで、自動火災報知設備等に関する基準の緩和措置はなかったようです。
しかし、消防庁予防課より通知が公布され、主要構造部を耐火構造とした共同住宅の住戸は一定の条件を満たしていれば、当該住戸はそれぞれ別の建築物とみなして、自動火災報知設備が免除されるようになりました。
これは通称 "共同住宅特例" と呼ばれ、適用できる共同住宅は各住戸が開口部のない耐火構造の床、壁などで防火区画されていることが条件であり、一般ビルと比較して火災時における延焼拡大の恐れが少ないということから、設備の緩和が施されてきました。
そして、現在は「特定共同住宅」の総務省令第40号が、またその関係告示が平成19年4月1日に施行され、消防用設備等自体の設置免除などを受けることができるようになっています。
消防法上での共同住宅の扱い
まず、共同住宅は消防法上では “非特定防火対象物” という不特定多数の人の出入がなく、危険が比較的少ないものに分類されています。【(5)項・ロ 共同住宅】
そして、デイサービスは “特定防火対象物” という不特定多数の人の出入があり、危険度が比較的高い施設であるとされています。【(6)項・ハ デイサービス】
ここで、“非特定防火対象物” である共同住宅に、 “特定防火対象物” であるデイサービス等の福祉施設が入ると、建物全体が複合用途防火対象物という分類となり、共同住宅が特定防火対象物の扱いに変わります。【(16)項・イ 複合用途防火対象物】
そのため、共同住宅全体に危険度が高い施設用の消防法が適用されます。
しかし、すでに共同住宅特例を適用している場合は異なります。
共同住宅特例を適用しているもの
以下の要項を満たす場合に限って、デイサービス等の福祉施設が入居した場合でも、共同住宅部分に消防用設備などを設置しないことが継続できます。
- 共同住宅等並びに福祉施設等の用途以外の用途に供する部分が存しないもの。
- 福祉施設等の床面積の合計が、延べ面積の10%以下、かつ300㎡未満のもの。
- 福祉施設等の各独立部分の床面積がいずれも100㎡以下であること。
- 福祉施設等を含めて、共同住宅特例の要件に適合していること。
これらをすべて満たすことができる場合、“特例の特例” として入居する部屋のみ、消防用設備を設置することで足りることとなります。 ※法改正あり↓
【追記】
平成30年6月1日に法改正がありまして、(6)項ロ・ハ 福祉施設等の他に(5)項イ 民泊の用途が入っていても共同住宅特例が適用可能となりました。📝✨
📖(´-`).。oO(詳しくは、ブログ記事 “またコッソリと民泊の消防法が改正されました” をご一読下さいませ…。。)
“特例の特例” の申請書類
特例申請には、大きく以下の書類が必要となります。
- 消防用設備等(特例承認・除外)願出書
- 委任状 ※消防設備業者が代行申請するため。
- 誓約書
これらに、共同住宅の “所有者” の署名・捺印(法人の場合はゴム印と会社印)を押していただきます(占有者ではない)。参考:大阪市
また、1.の特例願出書には、防火対象物の付近見取り図・配置図・平面図などの図面関係に加えて、共同住宅の既存福祉施設の床面積と、そこに入居する部屋の床面積の合計が300㎡未満であることを証明する書類も併せて提出する必要があります。
(共同住宅特例の書類もあれば、添えた方が良いようです。)
(´-`).。oO(これが手間がかかる面倒くさい仕事です…。。)
共同住宅に入居した福祉施設の消防用設備
上記の共同住宅特例を、特例の特例申請によって継続したとしても、福祉施設等が入居する部分には消防法に則り、適切な消防用設備を設置する必要があります。
令別表1の中で、(6)項ハに分類されるデイサービスや、(6)項ロの老人ホームは、すべての場合において自動火災報知設備を設置する必要があります。 参考:日本消防設備センター
ただし、共同住宅特例を継続するための要項の中に、床面積100㎡以下という文言があるため、この場合に設置するのは “特定小規模施設用自動火災報知設備” となります。
(´-`).。oO(あとは、誘導灯を設置するといったところでしょうか…。。)
また、(6)項ロの老人ホーム等の場合のみ、スプリンクラー設備の設置義務も生じてきますので、注意が必要です。
(´-`).。oO(パッケージ型自動消火設備がオススメです…。。)
“みなし従属” の法改正
もともと、当該防火対象物の合計床面積が延べ面積の90%以上でかつ他用途部分の床面積合計が300㎡未満である場合は、機能的に従属しているとして、複合用途防火対象物にはなりませんでした。
しかし、368号令という法改正により、(5)項イ ホテル・民泊や、(6)項イ 病院・診療所、(6)項ハ デイサービス等にも、延べ面積にかかわらず自動火災報知設備の設置義務が生じることとなりました。 参考:41号通知
そのため、上記の “みなし従属” の規定が適用されず、少しでも民泊やデイサービス等が入居したら複合用途防火対象物として扱われることとなりました。 参考:消防予第81号
(´-`).。oO(BTB溶液の入った中性の液体に、一滴でも塩酸を加えると、緑色から黄色に呈色してしまう様子に似ていますね…。。)
そこで、共同住宅特例として自動火災報知設備などの消防用設備が免除されているものに関して、福祉施設等が入所してしまうと共同住宅特例の継続が困難になるものが多数生じたため、特例の特例を適用することで引き続き共同住宅特例を継続しやすくすることとしたわけです。
(´-`).。oO(やや専門的すぎますかね…。。)
一定の構造条件を満たす場合の"スプリンクラー設備"
共同住宅の一部を認知症高齢者グループホーム、有料老人ホーム、障害者ケアホーム・グループホーム等として用いる場合、消防法令上の用途区分が共同住宅(5項ロ)から特定複合用途防火対象物(16項イ)に変更となるケースがあります。
ただし、以下の考えを踏まえ、住戸ごとに防火区画がされているなどにより、グループホーム等における入所者の避難安全が確保され、他の一般住戸についてグループホーム等が入ることにより危険性が高まることがないものは、建物全体に係る消防用設備等の設置について、特段の変更を要しないものとされました。💡
- 認知症高齢者や障害者の共同生活の場として、グループホーム等が住戸単位で組み込まれている。
- 家具・調度等の可燃物、調理器具・暖房器具等の火気使用、入所者数等も他の一般住戸とほぼ同様である。
- グループホーム等と共同住宅は、生活の場としての性格は同様である。
- 用途の複合化によって雑居ビルのような危険性が生じるおそれは比較的低い。
まとめ
- 共同住宅の一部で福祉施設等を営業する際は、自動火災報知設備などの消防用設備があるか確認する必要があった。✅
- 共同住宅には、共同住宅特例が適用されて消防用設備の設置が緩和されている場合があった。✅
- 共同住宅に福祉施設等が入ると複合用途防火対象物の扱いになるが、共同住宅特例の適用を受けている場合は特例の特例があった。✅
コメントをお書きください